Iron Maiden And Now

で、結局どうだったのか?というお話

Date: Jan 13, 2014

アイアン・メイデンが違法ダウンロードを活用してツアーの開催地を選定し、逆に収益を伸ばしたというニュースが去年末から続々とシェアされ続けていた件について。メイデンの公式サイトでの発表はないもののこれはちょっと面白い現象だなぁと思ったので書いてみることにします。どおもミーです。

結論から言うと、そのような事実はなかったとニュースソースが訂正したことで決着しました。と思います。

事の発端は the Guardian のサイトに掲載された、英国経済の復活を牽引する音楽会社のひとつとして Iron Maiden LLP を取り上げた記事で、海外では人気・知名度が高いP2Pファイル共有ソフト BitTorrent / ビットトレントや Facebook、Twitter、Myspace、Last.fm といったSNSのユーザデータを用いた音楽データ解析ツールを提供する Musicmetric の CEO が、「BitTorrent のデータを解析すると南米、特にブラジルが世界で最もメイデンのファイルが共有されている国のひとつだから、ブラジルは大きなマーケットになるよ!違法ダウンロードのデータが役に立つと思うんだ!」 と発言したことでした。これ、実は Musicmetric が直接メイデンに言ったわけではなかったんですね。

確かにミーの拙い英語能力で読んでみても、the Guardian の記事は「Musicmetric のCEOは言った『BitTorrent のデータが示す南米での違法行為の多さはむしろファンの多さを提示している』と。」とは書いてあるんだけど、「CEOは言った『私はMusicmetric社としてアイアンメイデンに南米で違法行為が多いのでそのファンのためにツアーをしたらどうか?と提案しました』と。」とは書いていないように見えます。むしろその逆で、「コンスタントにツアーを行っているおかげで、海賊行為をする人たちもお金を払って見に来てくれるお客に変えることができているんだろう」と言ってると訳しました。私は訳したのです。

ところが CITEworld というIT系ブログが "How Iron Maiden turned piracy into paying customers" (アイアン・メイデンはいかにして著作権侵害者を正規のお客に変えたのか)という記事でMusicmetric社がメイデンに直接働きかけたかの様な内容を掲載したことをきっかけに、あれよあれよといううちに「アイアン・メイデンが Musicmetric 協力の元、違法ダウンロードデータを解析して、海賊行為を行う彼らのためにツアーを行うことに決めたそうだ」という "真実" となって、メジャーなニュースサイト でも取り上げられてゆきました。

我々メイデンファンは思います。「なんて素敵なお話……!」

実際、私もそうでした。どこからかやってきたこのニュースに関するツイートをリツイートしたりもしました。以前からメイデンは革新的な取り組みにはとても前向きだということは分かっていますし、実際アルバム発売前に視聴として丸々1曲ダウンロードできるなんてこともありました。それもおそらくはCD音質で。だから海賊版が多く出回る地域でこそツアーを組もうという心意気もメイデンならさもありなん。確かめもせずに真実だと思いました。当たり前です、ニュースサイトが発信したニュースなんだから。そして、このニュースに興味のある人のほとんど大部分が本当のことだと思ってみんなに知らせてあげました。

ここへ至り、あれ? 俺たちメイデンにコンサルしたっけ? 何やら話がおかしな方向へ大きくなっているような……と気付いた Musicmetric が「 直接メイデンに南米ツアーした方がいいよってアドバイスしたわけではありません! 」と訂正しますが、時既に遅し。未だに真実として拡散されているっぽい。

これ程までにファンに信頼されているメイデンを相手に売名行為みたいな事はいけない……!と思ったかどうかは分かりませんが、オオゴトにビックリしてメイデンサイドから指摘を受ける前に訂正した Musicmetric はちょっとかわいいなーと思いました。この一連の件については下記のサイトが詳しく調査しています。ので大いに信用しました。こんだけ文字書いておいてしっぺ返し喰らったりしませんように!他のソースも同様に訂正されてるから大丈夫だとは思うんだけど。

ヘビメタのスーパーバンド、アイアン・メイデンは著作権海賊が大好きという作り話がネットで事実に化けたわけ - TechCrunch Japan

もうーほんと騙されたよー。全然、騙されたぞこんちくしょうCITEworld許すまじ、とは思わないんだけど、私も迂闊だったなぁと。メイデンを賞賛する美談って言うだけでソース辿る判断力が鈍るんですもの。あんまりにもそれらしくて、そしてそうであってほしい美談だったから。でも美談が過ぎました。だけどもイギリスでの違法ダウンロードが減ってるっていう こんな記事 も見つけたりしたから、幻の美談以外の部分で先のニュースが伝えるとおり、イギリスの音楽業界の未来はちったぁ明るいのかもしれないね。(一応このデータを提示したという英国情報通信庁 Ofcom / オフコム のサイトでソース探してみたんだけど、見つけられませんでした……。どこの国もお役所のサイトが見づらいのは一緒なのね。)

で、このニュースを調べている時にちょっと古いですがこんなニュースも見つけました。

アイアン・メイデンのブルース・ディッキンソン、戦争に投資しているという批判に反論
- RO69(イギリスの音楽誌のサイト NME.COM の翻訳 )

ブルースとマネージャーのロッドさんがハイブリッド航空機(HAV)社に投資している、という事実から、ドーセット・アイというイギリスのローカルニュースサイトが「アイアン・メイデンのブルース・ディッキンソンが米軍から5億ドルの報酬を受け取って『空気より軽い』無人戦闘航空機の開発を進めている」という記事( "Bruce Dickinson: Rock ‘n’ Roll Warmonger" )を書いたことについて、メイデンサイドが抗議したよ!という内容です。

さて、これはどちらが正しいのか。

ひとつ、事実としては、ドーセット・アイはアイアン・メイデンやブルース・ディッキンソン本人に直接取材やインタビューをしたわけではないということ。もうひとつ、NME の記事のソースはメイデンの広報が出したということ。ではメイデンの広報は真実しか語らないのか? メイデンメンバーひとりひとりのプライベートまで一切合財把握しているのか? それはわかりません。

そうです、わからない、が答えです。

ドーセット・アイが大きなお金が動く=軍事産業という偏った側面でしか見られていないことや、ジャーナリズムを笠に着て揚げ足取りのロックンロール批判をしたい思惑があるように見える(やり方がお約束過ぎる)ので、この件についてはある程度、真実は見えているのかなーとは思いますが、心情的に傾きたい方向はありつつも、結局真実をすべて見ているわけじゃないってことはネットに生きてる身としてはいつも忘れちゃいけないなーと思いました。うん、またなんだ。Ozzfest 事件でイヤってほど踊らされたのにね!

思いましたが、この記事を読んでいるときに、最近知ったとあるプロジェクトを思い出して、ちょっと怖いなーとも思いました。

ある技術が不特定多数の人々を豊かにすることで、どこかの誰かの富が確実に減ったりなくなるモノというのは、いつの時代もアブナイ技術を推し進めたい利権者に難癖をつけられて、最悪、技術そのものから何からまで存在を隠蔽されて、消されてしまうのがこの世の悲しき常なのです。

わたし実は、エジソンよりもニコラ・テスラを尊敬しています。エジソンは確かに商売上手だったかもしれませんが、エジソンがテスラをクビにせず、テスラの技術が平和利用のうちに世界基準になっていれば、電力は利権ではなく本当の意味で世界共有資源になっていたでしょうから。

ここで思い出したのが清水建設の「月太陽発電ルナリング構想」です。清水建設というのは主に伝統建築を修復したり耐震改修したり、エコな建築的な取り組みをやってたり、ソーラーパネルを開発してたりする会社のようなんですが、そこが考えたまさにテスラ・コイルさながら世界いや宇宙規模の発電システムを最近知ったのです。月の赤道って言うのは常に太陽光を浴びてるんだそうです。そこにソーラーパネルをぐるっと一周取り付けて、劣化の少ないレーザー光で電力として地球に転送したら永久機関できるんじゃね?(永久機関違う)という構想です。

これ、間違えるとテスラの軌跡を辿るよね……と。わたしは思いました。

願うらくは、メイデンのような知名度のあるメタルアーティストがイイコトをしたら困る誰か、みたいな人たちに見つからないうちに、ちゃんと利権握ってくれるひとが実用に向けて動いてくれること。民間利用できるならもう利権発生しちゃってもしょうがないやね。

確かに死の商人という人たちはいます。テスラは世界平和が実現できないうちはテスラ・コイルは実用してはならないと自ら考えていたようですが、何から何まで軍事利用に結びつけるのはちょっとねー。ブルースの記事にもありますが、新しい技術を開発する段階で、どこがお金を出しやすいか、ということだけなわけですよ。インターネットはざっくり言うとアメリカ国防総省・ペンタゴンが作りました。(端折りすぎ)でもなんとか上手くいって軍事的に限られる技術ではなくなりました。わたしがこうしてメイデンのニュースを書けるのもペンタゴンのおかげです。(やっぱり端折りすぎ)

ブルースの記事に戻ると、ドーセット・アイが深読みする手前の部分、メイデンが公式に発表してる内容だけを真実と見るならば。いま、ハイブリッド航空機来るー!って思っている人たちがいます。そこへ航空技術の発展を支えたいと常に願っている(これは事実と見てもいいと思う)収入源のリスク分散が大変上手なブルース・ディッキンソンという人、そしてそのブルース・ディッキンソンという人がパイロットになりたいと思ったときに、その夢の実現に向けて影で支えたちょっぴりお金をたくさん持ってるロッド・スモールウッドという人が、「ハイブリッド航空機、たぶんわたし達作れます!」という会社にお金を出したというだけのお話だと思います。なんなら別に無人飛行機作ったっていいと思うしね。兵士使わずに攻められる!とか、監視だ!スパイだ!って発想しかないこと自体終わってると思います。技術はいくらでも活用できるよ。むしろメイデンみたいな戦争の対極にいる人たちが出資してくれたことに感謝するべき!

というところまで書いて、技術屋でも天才でも何でもないのにこんなこと考えてるミーが一番危ない人だと思いました。

で、結局どうだったのか?というと。うそをうそと見抜けないと云々 とは上手く言ったものだと思うけど、勘ぐり過ぎて 陰謀論 にまで手を出すと、疲れるのであんまおすすめしないなー都市伝説好きだったらしょうがないけど、というお話でした。え? そうなの?